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犬も虫歯になる?気になる黒い点の正体と予防対策

2025.10.03

コラム

愛犬の歯に黒い点があるのに気づき、「虫歯かもしれない」と心配になったことはありませんか。人間であれば虫歯を疑うところですが、実はわんちゃんは虫歯になりにくいといわれています。しかし、歯の黒い変色は口腔内のトラブルサインかもしれません。

本記事は、わんちゃんの黒い点の正体について解説します。虫歯と歯周病の違いや予防方法、治療の流れなどもあわせて紹介しますので、日頃のケアや受診の判断に役立ててみてください。

わんちゃんに虫歯が少ない理由とは

わんちゃんは一般的に虫歯になりにくいといわれています。その大きな理由の一つが、口内の唾液がアルカリ性に近く、虫歯菌が増えにくい環境にあることです。さらに、歯の形が鋭くて厚みが少ないため、汚れや菌がとどまりにくいという特徴も関係しています。

一方で、アルカリ性の影響で歯垢が石のように固まりやすく、歯石が短期間でたまりやすい傾向です。そのため、わんちゃんは虫歯よりも歯周病のリスクが高いとされています。

虫歯は歯の表面が酸によって徐々に溶けていく状態を指しますが、歯周病は歯ぐきや周辺の組織に炎症が起こる異なるタイプの病気です。

歯に黒い点があるときに考えられるお口のトラブル

愛犬の歯に黒い点が見つかると、虫歯ではないかと不安になる方もいるでしょう。ですが、歯に現れる黒い変色の正体はさまざまで、必ずしも虫歯とは限りません。

実際には、歯石が黒ずんで見えることや、食べ物などの色素沈着が原因になっているケースもあります。

とくに歯の溝や歯の間、歯ブラシが届きにくい部分は汚れがたまりやすく、そこに沈着や変色が起こりやすい傾向です。 また、歯が折れて内部が露出したり、神経の壊死によって黒ずんで見えることもあります。

このように、黒い点があるからといって虫歯とは限りませんが、いずれの場合も口内の異常が関係している可能性があるため注意が必要です。

愛犬が虫歯になる原因

わんちゃんは虫歯になりにくいといわれていますが、まれに発症することもあります。食生活や日々のケア、体質など、原因はさまざまです。

ここでは、愛犬が虫歯になる主な原因を紹介します。

わんちゃんの体質によるもの

わんちゃんの唾液には虫歯菌の繁殖を抑える作用がありますが、体質によってはこの働きが十分に機能しないことがあります。たとえば、唾液の分泌量が少ない子や、アルカリ性の度合いが低めの体質の子は、虫歯菌の影響を受けやすい傾向です。

さらに、シーズーなどの短頭種やチワワなどの小型犬は口腔内が狭く、歯が密集しているため、汚れがたまりやすいといわれています。歯並びや噛み合わせの乱れも、汚れの蓄積を招く原因のひとつです。

おやつのあげすぎ

おやつのあげすぎは、虫歯のリスクを高める原因のひとつです。おやつの多くは糖質が含まれており、これを栄養にして虫歯菌が酸をつくります。その酸が歯の表面に作用し、少しずつ溶かしていくことで虫歯が進行する仕組みです。

さらに、粘着性の高いおやつは歯に付着したままになりやすく、酸の働きを受けやすい状態を長引かせる原因となります。また、おやつの量が多すぎると肥満にもつながるため、回数や内容を工夫して取り入れることが大切です。

人間用の食べ物をあげている

人間の食べ物は、わんちゃんには適していません。とくに、加工食品には糖分や油分、塩分などの添加物が多く含まれ、虫歯の原因につながります

また、人間向けに味付けされたものに慣れると、わんちゃん専用フードを食べなくなる可能性も。食習慣の乱れが続くと、虫歯だけでなく他の健康被害にも影響を及ぼすおそれがあります。

なお、味のついていない野菜や果物は虫歯への影響が少ないとされますが、わんちゃんが食べてはいけない野菜や果物があるため、あげる前にしっかり確認することが大切です。

愛犬とのスキンシップが多い

愛犬とたくさんふれあうのは楽しい時間ですが、口まわりのスキンシップには注意が必要です。口移しや顔をなめさせる行為を通して、人間の口内にいる虫歯菌がうつる可能性があります

とくに「ミュータンス菌」と呼ばれる菌は虫歯の原因として知られており、唾液を介して感染するといわれています。ただし、わんちゃんの口内は人間とは環境が異なるため、虫歯として症状が出るケースは少ないといわれています。

一方で、歯ぐきの炎症や歯石の蓄積といった歯周病は、より身近なリスクとして注意が必要です。人間からうつった菌が歯周環境を悪化させる可能性もあるため、口を介した過度なスキンシップは控えたほうがよいでしょう。

歯石の放置

歯石をそのままにしておくと、虫歯の原因になることがあります。歯石の表面には細菌が繁殖しやすく、虫歯菌が酸を生み出す環境をつくってしまいます。

虫歯はもちろん、歯ぐきの病気につながることもあるため、歯石は定期的に除去することが大切です。

虫歯のサイン

わんちゃんに虫歯ができると、次のような変化が見られることがあります。

  • ・ご飯を食べるのが遅くなる
  • ・急にご飯を食べなくなる
  • ・硬い食べ物を嫌がる
  • ・冷たいものを口にしたがらない
  • ・顔まわりを触れるのを嫌がる

 

これらは、噛んだときに痛みや違和感があることで起こる反応です。とくに、歯の神経が刺激に敏感になっていると、冷たい食べ物を嫌がることも。

なお、わんちゃんが虫歯だけを発症することは稀なため、もし虫歯だった場合、歯周病がすでにある可能性が高いです。いつもと違う様子が見られたら、獣医師に相談しましょう。

愛犬が虫歯になったときの治療方法

虫歯の進行状況に応じて、主に「削る」「神経を取る」「抜歯」といった処置が行われます

初期であれば虫歯になった部分だけを削るだけですむため、短時間で処置が済む傾向です。痛みが出ている場合や虫歯が神経まで進行している場合は、内部の神経を取り除く処置が行われることもあります。

さらに重度になると、歯を残すことが難しくなり抜歯を必要になる可能性も。抜歯後は、食事のあげ方や口腔ケアへの配慮が必要です。

治療方法の判断は、虫歯の進行状況や愛犬の年齢、麻酔のリスクなどを考慮して動物病院で検討されます。

愛犬の虫歯を防ぐためには?

虫歯予防には、毎日の歯磨き習慣を身につけることが大切です。まずは、わんちゃん用の歯ブラシに慣れてもらうことから始めてみましょう。最初は指にガーゼを巻いてやさしく歯に触れ、少しずつ歯ブラシに移行するとスムーズです。

歯ブラシは、愛犬のお口のサイズに合ったものを選んでください。固すぎたり大きすぎたりすると痛みを感じやすく、歯磨きそのものを嫌がるようになる可能性もあります。

もし歯ブラシでのケアが難しい場合には、ガーゼを使ったケアやデンタルガムの活用も有効です。できる範囲で毎日続けることが、虫歯予防につながります。

まとめ

わんちゃんは虫歯になりにくいとはいえ、黒い点や口内の異常が見られた場合には注意が必要です。虫歯以外にもさまざまな原因が考えられるため、自己判断で放置せず、まずは動物病院で診てもらうことをおすすめします。日々のケアを習慣化し、愛犬の口内環境を良好に保ちましょう。


Written by
監修医:小島 麻里 先生

犬猫生活往診クリニック代表獣医師。2013年酪農学園大学を卒業後、地域密着型の1次病院から大学病院、歯科専門病院など11年間小動物臨床で経験を積み、ペット栄養管理士取得後、往診専門動物病院を開院。保護猫おもち・わらびと暮らす。

 

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