【column】シニア期を迎えたら 食事でもっと健康に!
2025.09.17
|
何歳から「シニア」になるの?
犬たちの一生は私たち人間の一生に比べるととても短い、ということはみなさまもご承知の通りかと思います。アニコム損害保険会社が毎年発行する「家庭どうぶつ白書2024」によると、犬全体の平均寿命は14.2歳。体の大きさによって寿命は異なりますが、小型犬と大型犬の間におよそ3歳の違いがあり、小型犬の方が長生きであることがわかっています。
犬種別で見ると、トイ・プードルが15.3歳、ミニチュアダックスが14.9歳、柴犬が14.7歳、チワワが13.9歳と比較的長いものの、ゴールデン・レトリーバーが10.9歳、フレンチ・ブルドッグが11.1歳、バーニーズ・マウンテン・ドッグは8.8歳と犬種によってかなり差があるのがわかります。
このように犬種によって寿命が異なるため「シニア」と言っても一概に何歳から、とは言えないのですが、おおよそ小型犬で8〜9歳頃、中型犬で7〜8歳、大型犬で6〜7歳頃からシニア期に入ると言われています。シニア期に入ると体力の低下、免疫力の低下、視力・聴力といった感覚器の低下、関節や筋力などの低下、歯周病の悪化等といった変化が見られるようになります。
シニア期を迎える前に、今一度見直しておきたいこと
年齢を重ねていくと様々な変化が出てきますが、それが「変化」だと気付くためには、それまでのその子の様子をしっかり観察しておく必要があります。今回は「食」に特化してお話ししますので、食事に関してどういうところを観察しておけばいいのか、考えてみましょう。
みなさまは今食べさせているごはんのことをどのくらいご存知ですか?カロリー、タンパク質量、脂肪量などの栄養素、主となるタンパク質の種類、場合によっては産地などある程度把握されているでしょうか?また今のごはんを食べさせるようになってから、体重の変化はありましたか?筋肉のつきかたなど体つきに変化はないでしょうか?
朝と晩ではどちらの方がよく食べるか、また食べる速度はどのくらいか、食べ物を飲み込む時に頭を大きく振ったりしていないか、しっかり咀嚼して食べているか。またドライフードの粒の大きさの好みはどうか、お肉とお魚どっちの方が好きなのか、ウェットフードは常温と温めたものどちらが好みか、ムースがいいのか、スープがいいのか、挙げ始めるとまだまだたくさんありますが、そういった好みをご存知でしょうか?
もしご存知でないなら、一度しっかり観察してみて下さい。それが今の「普通」であり、それを把握できていれば、変化が出た時に気付きやすくなります。また1日におよそ何mlの水を飲んでいるかといったことも把握しておくといいですね。
健康診断を受けましょう!
シニア期に入ってきたら、健康診断を受けましょう!健康診断の内容に関してはかかりつけの先生とご相談なさるといいと思いますが、健康診断の結果次第で、今後起こり得ることを予想することができます。
例えば、今はまだ正常範囲内で治療するほどではないけれども、年齢を考えると腎臓の数値が少し高めかもしれない、ということがわかれば、尿素窒素(BUN)を上げないようにするため、動物性タンパク質の量が少し控えめなドライフードへの変更を検討しましょう。また腎臓への負担を減らすために摂取水分量を増やしたいのであれば、単に水を飲ませるだけでなく、ごはんの一部をウエットフードやスープなどに置き換えるなど、色々な方法で水分を摂取するといいですね。
ただ年齢を重ねると免疫力が落ちてきますので、急な変化に体が対応できないことがあります。ごはんの変更も少しずつ、気長にやっていきましょう。食事の時間が長くなったり、食べる時の様子が今までと違っていたり、元気だけれどもよく嘔吐するようになったり、便が少し柔らかくなるなど、ちょっとした変化を見つけた時は、本当にそのごはんが合っているのか今一度検討する必要があります。
食べることは生きること。ごはんをおいしく楽しく食べてくれることが何より大切です。まずはその子の好みをしっかりと把握し、その上でこれから起こり得る病気の予防ができるような食生活に変更していくことが、長生きの秘訣かもしれませんね!
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。