【column】夏を元気に過ごすにはお腹の健康が鍵?
2025.08.15
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夏になるとどうしてお腹の調子が悪くなるの?
厳しい暑さの日が続いていますね。今年は梅雨が例年よりも短く、7月の時点で真夏並みの猛暑になってしまい、「急に夏が来た!」と感じた方も多かったのではないでしょうか。こういう大きな気温の変化がある季節は、食欲がなくなったり、お腹を壊したりすることってありませんか?これはいわゆる「夏バテ」の症状のひとつで、こういった症状を起こすのは人に限らず犬たちも一緒です。ただ、人は衣服を調節したり汗をかいたりすることで、容易に体温を調整することができますが、犬たちは年中同じ毛皮をまとったまま、しかも汗をかくことができないため、一度上がった体温を下げるのには非常に時間がかかります。
急な気温の変化は、自律神経のバランスを崩します。自律神経、すなわち交感神経と副交感神経は、お互いにバランスをとりながら様々な体の機能を調整しています。交感神経は主に体を動かしたり興奮している時、また大きなストレスを受けると活性化し、逆に副交感神経は体を休める時、リラックスしている時に活性化します。
消化管の蠕動(ぜんどう)運動や消化酵素の分泌は、副交感神経が活発化すると促進されます。つまりこういった急な気温の変化で体がストレスを受けている時は、交感神経が活発化しているため消化管運動は制限されてしまうのです。その結果食欲がなくなってしまったり、食べたものが長い間胃の中に入っているとそれを排出するために嘔吐してしまったりします。また気温が急に上がると普段よりも水を飲む量が多くなるため、お腹がゆるくなったりもします。
猛暑日になると家の内外でも大きな気温差が生まれます。長時間エアコンの風に直接当たったりして体の芯が冷えてくると、交感神経優位となり消化管の動きが悪くなります。体温の低下は血管の収縮を引き起こし、消化管への血流量が減ってしまいます。動きが悪い上、消化に必要な栄養分の供給が少なくなり、また消化酵素の動きも悪くなるため、さらに消化が遅れてしまいます。これが食欲減退、嘔吐や下痢といった消化器症状を引き起こす原因となっているのです。
病院へは行った方がいいの?
連日猛暑日を記録する日本の夏。暑い日が続くと、体は緊張状態になり、交感神経優位の日々が続きます。いつもお散歩の後に食べる朝ごはんを食べない、いつもより食べるスピードが遅い、少しは食べるけどほとんど残すといった食欲の減退が見られます。
また2、3日続けて嘔吐したり、食事してからかなり時間が経っているのに、吐瀉物(としゃぶつ)に含まれているごはんがほとんど消化されていなかったり、下痢や軟便が数日続いている、という時は、一度かかりつけの先生に相談した方がいいでしょう。単なる夏バテや胃腸炎ではなく、急性膵炎(すいえん)や胆管肝炎(たんかんかんえん)、肝臓の数値が上がるなど治療が必要な状態になっている可能性があります。
いつもより少し食べる量が少ない、一度嘔吐したがその後はごはんを食べて元気、軟便だけど血便などではなく食欲もある場合はもう少し自宅で様子を見てもいいかもしれません。
犬も「腸活」が大切!
「腸活」という言葉、ご存知の方も多いかと思います。腸内の細菌叢(さいきんそう)を改善し腸内環境を整えることは、免疫細胞を活性化し、体全体の免疫力を上げていくことに繋がります。
犬の腸活は主に食事内容の改善、整腸剤などサプリメントを活用することで行います。食物繊維を含む食品を加えたり、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を与えてみたりするのも良いでしょう。ただし、犬は人と違って唾液に消化酵素が含まれておらず、胃に入ってから初めて消化が開始され、しかも消化酵素の分泌量も少なめです。
なので、人のように様々な食品を一度に消化することは得意ではなく、むしろ決まった食材以外のものは消化しにくいので、新しいものを試すときは慎重にしましょう。新しい食材は一度に何種類も与えたりせず、一個ずつ試していくようにするといいでしょう。
整腸剤も様々なものがありますが、その子に合ったものを選んでいく必要があります。合っているかどうかは、便の形状、色、臭いなどで判断しましょう。便は実に色々なことを教えてくれるので、毎日しっかり観察するといいですね!
適切にきちんと消化管が動ける環境を整えてあげることが、犬たちが夏バテすることなく元気に過ごしてくれる鍵となります。人も犬も猛暑を元気に乗り越えていきたいですね!
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。