【column】ストレスフリーな 生活を目指そう!
2025.07.15
|
犬たちにとってのストレスってどんなもの?
「ストレス」とは外部からの刺激(ストレッサーと言います)のことを言い、それによって起こる反応をストレス反応と言います。ストレスも実は心身に悪い影響を与えるものばかりではないのですが、問題になるのはやはり悪影響を及ぼすものです。犬たちにとってはどういったことがストレスとなるのでしょうか?
環境の変化:引越しや旅行、模様替えなど。また近隣の工事や花火など、犬たちにとって原因のわからない大きな音もストレスとなります。
家庭内の変化:例えば独り立ちして家を出ていく家族がいたり、逆に新しい家族が増えたり、また頻繁に来客があることがストレスになることもあります。
コミュニケーション不足:長時間の留守番や、飼い主と遊ぶ機会の不足、飼い主の機嫌などに左右されることがあります。散歩の時間が短いことが原因になることもあります。
行動の制限:長時間狭いクレートやサークルに入れられる、長時間抱っこされ続ける、リードに繋がれたまま、などが含まれます。
身体的な痛み:病気や怪我はもちろん、体罰などによる痛みは心身に深い傷を残します。
食事:適切なタイミングで栄養価の高い適切な食事を与えましょう。犬たちの嗜好性とかけ離れた食事もまたストレスとなります。
こう見ると犬たちが「ストレス」だと感じる事象はかなりたくさんあることがわかりますが、住居を清潔に保ち、新鮮な水と適切な食事を与え、散歩に連れ出し、一定の時間遊んだりしてコミュニケーションをとる、といった基本的なことをきちんと行うことでストレスはかなり減ることもわかります。
ストレスを受けるとどんなことが起こるの?
犬たちがストレスを受けると、それに対して体の中ではコルチゾールといったホルモンや神経伝達物質と言われるものの分泌量が変化します。また、受けているストレスの原因が「予測できない」→「対処できない」→「恐怖を感じる」の順でその反応は大きくなります。
さらにストレスに対する反応として、「生理的反応」と「行動的反応」があります。ストレスを受けて瞬時に起こる生理的反応としては、毛が逆立ち、ハアハアという荒い呼吸となり、心拍数が増加します。肉球に汗をかき、瞳孔も開きます。
行動的反応としては、威嚇し攻撃する、逃げ出す、硬直して動けなくなる、と様々です。そこまで大きなストレスでない場合は、あくびをしたり体を掻いたり、身震いをするといった行動が見られます。
ある程度連続的に受け続けているストレスに対しては、食欲の低下や嘔吐下痢などの消化器症状、毛艶が悪くなる、皮膚炎を起こすなどの生理的反応が見られます。
行動的反応としては、同じ場所をウロウロと行ったり来たりしたり、自分の尻尾を追いかけ回したり、毛や皮膚を噛んだり舐めたりします。こういった行為は心身ともに疲弊しやすいので、できるだけ早く解消させてあげる必要があります。
できるだけストレスを与えないために
できるだけストレスを与えないようにするためにいくつかのポイントがあります。
まずは快適な生活環境を整えましょう。お留守番の間も安心して休むことができるよう室内の温湿度の管理、ベッドやトイレなどの配置の配慮、清潔な水を用意しましょう。もし、近隣で大きな音を伴う工事が始まった場合は、TVをつけっぱなしにする、音楽をかけるなど少しでも外部の音が聞こえにくいようにするといいですね。
しっかりとコミュニケーションをとることも大切です。一緒に家族の団欒の時間を過ごしたり、真剣に遊ぶ時間を作りましょう。お散歩も大切です。犬種によっては走らせることが必要になるかもしれません。その子にとって必要なことを考えましょう。
少しずつストレスに慣らすことも大切です。生活環境・習慣を整えてあげることで心身ともに安定してくると、ストレスに対して耐性をつけることができます。犬の様子をよく観察して、何をどこまでなら大丈夫なのか、しっかり見極めながら慣らしていきましょう。
全くストレスがない生活というのは困難ですが、悪影響を及ぼすストレスからはしっかりと守って、日々穏やかに過ごしていきたいですね。
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。