【column】今日も安全に日向ぼっこ　猫と日光浴のお話

​​猫に日光浴って必要なの？

気持ちよさそうに微睡みながら日向ぼっこをしている猫たち。ほのぼのとして見ているこちらも和むものですが、そもそも猫に日向ぼっこは必要なのでしょうか？

太陽から降り注ぐ光には、赤外線、可視光線、紫外線があります。赤外線は体を芯から温め、血行を促進し代謝を活発にします。可視光線はビタミンDの生成に不可欠で、免疫力を上げる効果も期待できます。

そして紫外線です。UV-A、UV-B、UV-Cの３種類があり、このうちUV-AとUV-Bのみが地表に届きます。UV-Aは皮膚の深部に侵入し、メラニン細胞の沈着を促進し、コラーゲンを変性させます。一方でUV-Bは細胞障害作用が強く、短時間で皮膚表面にダメージを与えます。

「日光性皮膚炎」即ち日焼けは、猫の場合耳や鼻、目周り、口周りなど毛が薄い部分に出やすく、脱毛したり、ひどい場合は潰瘍(かいよう)になることもあります。これはUV-Bによって皮膚表面の細胞がダメージを受けた結果です。ただ、猫の場合短期間で症状が現れることは少なく、数か月〜数年かかる場合もあります。またUV-Bには発癌性があることもわかっており、過度に紫外線を浴び続けると、扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)や基底細胞癌(きていさいぼうがん)などを発症することがあります。

日に当たりやすく、ダメージを受けた皮膚は徐々に黒くなっていきます。顔周りや腹部などに「シミ」が見られる場合がありますが、それはUV-Aによるメラニン色素の沈着です。人の「シミ」と同じく一度沈着すると退色することはほとんどありません。

日光浴にはもちろんメリットもあります。猫は高い体温を維持するために太陽からの熱を効率よく活用しています。血行を促進する作用も期待できますので、関節痛や筋肉痛が緩和される可能性があります。

日に当たることでメラトニン分泌の調節が行われ、体内時計が整います。また幸せホルモンと言われるセロトニンを分泌促進することで、気分が前向きになり情緒が安定し、ストレスが軽減され、リラックス効果が期待できます。強い殺菌作用を持つUV-Cはオゾン層でほぼ吸収されるため、地表にはほとんど届きませんが、UV-Bにも多少の殺菌作用があるので、皮膚表面に存在する細菌や真菌の繁殖を抑える殺菌作用が期待できます。猫も皮膚表面でビタミンDを合成することはできますが、その量は極少量です。猫の皮膚で生成されたビタミンDはグルーミングする時に体内に取り込まれますが、体に必要なビタミンDのほとんどは食事から摂取しています。

理想的な日光浴とは？

本来日光浴をする時間は15〜30分程度で十分です。しかし、陽だまりが大好きな猫たちに30分経ったからといって日光を遮ってしまう、というのは現実的ではありません。ですので、好んで日光浴をする場所のガラスにUVカットフィルムを貼ったり、こまめにカーテンやブラインドを閉めるのもいいでしょう。カーテンの下に潜り込むような子の場合は、窓の外に葦簀(よしず)や簾(すだれ)などを設置してもいいですね。

いずれにしても長時間紫外線に当たらないよう、気をつけてあげましょう。特に日差しの強い10時〜16時頃までは直射日光を浴びるのは避けた方が良いでしょう。ベランダや庭に出して日光浴をさせる場合は時間厳守です。くれぐれも日に当たり過ぎないよう気をつけましょう。

安全に日光浴を楽しもう！

白い被毛の猫、被毛が細く毛量の少ない猫、無毛の猫種、自ら移動したがらないシニア猫は日焼けしやすいので注意が必要です。白い被毛の猫は元々メラニン色素が少ないのですが、中でもブルーアイの白猫が最も紫外線の影響を受けやすいと言われています。また体の一部に白い被毛がある猫も、部分的に日焼けしやすいので注意しましょう。

直接皮膚に紫外線が当たらないようにする方法はいくつかありますが、近年猫用の日焼け止めスプレーやクリームが販売されています。最初は耳先などに少量を塗布し、アレルギー反応が出ないか確認した上で、耳や鼻など直接日光が当たりやすい場所に塗布しましょう。基本的に猫が舐めてもいいものになっていますが、購入の際は確認して選ぶようにしましょう。

正しいやり方で日光浴を行うことは、多くのメリットがあり体と心の健康に繋がります。適切、且つうちの子に合った方法で、続けていきたいですね。

Written by
監修医　小林 充子 先生

麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV（小型球形ウイルス）の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。