【column】梅雨を元気に過ごすために!
2025.06.13
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蒸して暑い季節、どうやって過ごせば楽になる?
「四季」から「二季」へと変化しつつあると言われる昨今の日本の気象。確かに春と秋の期間が短く、酷暑の夏、雪深い冬が長く続いています。梅雨の時期にも変化が見られ、6月の平均最高気温は50年前は25.0℃だったのに比べ、昨年は27.7℃と大きく上がっています。平均気温が1℃上がることがいかに大変なことかは皆さまもご存知のところと思いますが、気温だけでなく湿度も高いと実際の数字以上に体感温度が上昇します。
また梅雨の時期は低気圧が停滞し気圧が低い状態が続きます。そうすると体にかかる圧力が低下するので体が膨張し、自律神経に乱れが生じます。つまりこの時期を快適に過ごすためには「温度」「湿度」そして「気圧」のコントロールが必要になるのです。
室温は25〜26℃、湿度は40〜50%程度にコントロールできると過ごしやすい環境となります。エアコンや除湿器、また室内の空気がうまく循環すると、体表面からの放熱が促され涼しく感じるため、扇風機やサーキュレーターなどをうまく使うといいでしょう。
また家の中でも場所によって、ある程度温度勾配が付いている方が良いでしょう。全くエアコンが効いていない部屋は論外ですが、直接風が当たらない、多少他の場所よりも暖かい、といった場所があれば、よりその時の自分に合った快適な環境を求めて猫は自身で移動します。 このように温度や湿度はある程度コントロールできますが、気圧に関してはなかなかコントロールできません。ですので、せめて体の中に水分を溜めないように、利尿作用のある食べ物やサプリメントを使ったり、四肢の先端を温めて末梢血管の血液循環をよくしてあげたりしましょう。
梅雨の時期に気をつけたい病気
温湿度が高い時期は皮膚トラブルが多い傾向にあります。ちょうど換毛期に重なるため、それに伴う過剰グルーミングが状態を悪化させることも多く、お腹や胸などに脱毛部分ができたり、脇や内股が蒸れて膿皮症(のうひしょう)を起こしたりします。
猫の皮膚病は一度起こしてしまうと完治させるまでに時間がかかるケースがほとんどです。特に過剰グルーミングが厄介なので、エリザベスカラーをしたり洋服を着せたりして、患部を舐められないようにする必要があります。
また気圧が低くなると体内に水が溜まりやすく、炎症反応が強く出たり自律神経に乱れが出やすくなります。そのため、心筋症や僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)といった循環器系の持病を持っている子は、急性肺水腫を発症したり、病態が悪化しやすいので注意が必要です。癲癇(てんかん)の持病がある場合、梅雨時は非常に発作が起こりやすい時期です。投薬を欠かさないようにしましょう。
この時期、我々も食中毒を起こすことが多くなりますが、それは猫も同じです。昨今、保存料不使用というごはんが多く販売されています。猫の健康を考えるとそういうごはんを選ぶに越したことはないのですが、保存料が入っているごはんよりも傷みやすくなっていますので、残っているドライフードの上に新たに足すようなことはやめましょう。
梅雨に負けない体を作ろう!
猫は雨が降ると狩りが難しくなるため、体力を温存するためほぼ1日寝て過ごします。さらに彼らは雨が降ることをあらかじめ予知できるとも言われており、そういった日は早々に寝て過ごすことを決めてしまいます。
そのため長雨が続くと体内時計が狂いがちになりますので、梅雨の晴れ間にはしっかり太陽の光を浴びられるようにしてあげましょう。メラトニンの生成が抑えられ、体が活動モードに切り替わります。ストレスを溜めないようにするのも大切です。毎日10分程度で構わないので、猫たちが好きなおもちゃで遊んであげる時間を作りましょう。運動不足の解消になるだけではなく、飼い主さんとの大切なコミュニケーションの時間になります。
身体全体をブラッシングしたり、手で撫でてあげたりするのも効果的です。血流を良くし、代謝をあげることが主な目的ではありますが、これもまた猫との絆が深まるきっかけとなります。上手にストレス解消をさせつつ、適度に運動させ、お互いにいい関係を築くようにしましょう!
梅雨の時期は猫も我々も鬱々としがちですが、少しでも快適にストレスなく過ごせるよう色々なことに配慮して元気に過ごしていきたいですね!
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。