愛犬にナッツをあげても大丈夫?食べたときのリスクや応急処置も解説
2025.09.03
|
ナッツは栄養価が高く、カリッとした食感から、人間のおやつとして親しまれている食品のひとつです。しかし、種類によってはわんちゃんにとって危険なものもあり、中には中毒症状を引き起こし、健康に深刻な影響を与えるナッツも存在します。
本記事では、わんちゃんが食べても問題のないナッツの種類や食べてはいけない危険なナッツについて、わかりやすく解説します。誤って食べてしまったときのリスクや応急処置についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
愛犬はナッツを食べられる?
ナッツ類には多くの種類があり、わんちゃんが食べても問題のないものも存在します。ただし、ナッツ全般は消化に悪く、あげ方を誤ると健康リスクが高まる食材です。実際に食べると、嘔吐や下痢、アレルギーなど、さまざまな健康被害を引き起こすおそれがあります。
なお、ナッツと間違われやすい食べ物にピーナッツがありますが、こちらはマメ科の植物であり、豆類に分類されナッツとは異なります。ただし、消化に悪く、詰まらせる可能性があるのは共通しているため、いずれも注意が必要です。
このようなリスクを考えると、ナッツは愛犬にあえて食べさせる必要のない食材といえるでしょう。すでに良質なドッグフードを食べているわんちゃんであれば、ナッツから過剰に栄養を補う必要はなく、無理に取り入れる必要もありません。
愛犬が食べられるナッツの種類
わんちゃんが食べられるナッツの種類は、以下の通りです。
- ・クルミ
- ・アーモンド(スイートアーモンド)
- ・カシューナッツ
- ・ピスタチオ
わんちゃんが食べられる種類のナッツはいくつかありますが、脂質が多く高カロリーなものばかりです。カロリー制限が必要な愛犬は、あげる量や頻度にいっそう配慮してあげる必要があります。
愛犬に危険なナッツの種類
わんちゃんにとって危険なナッツは、マカダミアナッツとビターアーモンドです。これらは中毒を引き起こす成分を含み、命に関わる健康被害を与える可能性があります。
マカダミアナッツは、少量でも中毒症状を引き起こす非常に危険な食材です。症状は食べてから1時間以内に現れることもあり、多くは12時間以内、遅くとも24時間以内に発症する可能性があります。
【食べたあとに見られる主な症状】
- ・嘔吐
- ・発熱
- ・後ろ足のふらつきや麻痺
- ・ふるえ
- ・活動量の低下
また、マカダミアナッツオイルも同様に危険性があるため注意が必要です。お菓子や加工食品に使用されていることがあるため、原材料表示をよく確認しましょう。
さらに、ミックスナッツの中にマカダミアナッツが含まれている場合がありますが、安全なナッツだけを選んであげるのは避けてください。見た目ではわからない破片や油分が混入している可能性があり、完全にリスクを排除することは困難です。
危険なナッツを食べたときの応急処置や対処法
わんちゃんが危険なナッツを食べてしまった場合、慌てずに状況に応じた正しい対応を取ることが大切です。食べてしまったときの応急処置や対処法をご紹介します。
急変時はすぐ受診
中毒症状が出ている場合や、食べた量が多いと判断される場合は、迷わずすぐに動物病院を受診してください。無理に吐かせるのは、食道に詰まるおそれがあるため危険です。
受診の際は、ナッツを食べた時間や量、ナッツの種類などをあらかじめメモしたり、ナッツが入っていた袋を持参するとスムーズに状況を説明できます。
24時間は様子を観察する
マカダミアナッツによる中毒症状は、摂取から24時間以内に現れることが多いため、その間はわんちゃんの体調を注意深く観察することが大切です。
嘔吐が見られる場合、ご家族が応急処置として水を飲ませたくなることがありますが、嘔吐を繰り返している最中に水分を与えると、かえって胃を刺激し、症状を悪化させるおそれがあります。
このようなときは、水や食事を控え、できるだけ安静に過ごさせることが望ましい対応です。ナッツを食べたあとに嘔吐が確認された場合は、迷わず動物病院を受診してください。
ナッツをあげる前に知っておきたいこと
ナッツは人間にとっては栄養価が高く、健康的なおやつとされていますが、わんちゃんにとってはさまざまなリスクを含む食材です。
たとえ中毒を起こさない種類であっても、体質や与え方によって健康に悪影響を及ぼす可能性があります。とくに人間向けに加工されたナッツには、塩分や香料などの添加物が加えられていることが多く、注意が必要です。
以下に、ナッツをあげる前に知っておきたい主なリスクを解説します。
消化管閉塞のリスク
ナッツは硬く消化されにくいため、腸の狭い部分で詰まりやすく、消化管閉塞(腸閉塞)を引き起こす可能性があります。とくに消化器官が小さな小型犬は、喉や食道でも閉塞する可能性があるため、わずかな大きさのナッツでも注意が必要です。
主な症状は、以下の通りです。
- ・嘔吐または吐こうとする
- ・食欲の低下
- ・便が出ない・下痢
- ・お腹を痛そうにしている(お腹に力が入っている、縮こまるなど)
- ・元気がない
- ・呼吸が苦しそう
場合によっては、開腹手術による異物の摘出や、壊死した腸の切除が必要になることもあるため、少しでも異変を感じた際には、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。
アレルギー
ナッツは、少量であってもアレルギーを引き起こす可能性がある食材です。口まわりや耳、目、鼻などに赤みやかゆみ、脱毛が見られる場合があり、顔や体をしきりに掻いたりこすりつけたりする様子が見られることがあります。
皮膚トラブルが続くと慢性化するおそれがあるため、異変に気づいた時点で早めに対処することが重要です。
下痢や嘔吐
ナッツは脂質が多く、消化に時間がかかるため、わんちゃんの胃腸に負担をかける食材です。食べたあとに下痢や嘔吐などの消化器トラブルを起こすことがあり、場合によっては体力を大きく消耗してしまいます。
とくに消化機能が未熟な子犬や、体の機能が低下しやすいシニア犬は、少量でも体調を崩しやすいため注意が必要です。こうした時期のわんちゃんには、ナッツはあげないようにしましょう。
塩分過多
人間用に味付けされたナッツは、塩分が多く含まれていることが一般的です。わんちゃんにとっては、少量でも腎臓や心臓に負担をかける可能性があり、とくにシニア犬には大きなリスクとなります。
市販のおつまみ用ナッツや加工品は、塩分以外にも香辛料や油分が加えられていることが多いため、愛犬にあげるのは避けましょう。
まとめ
ナッツ類は人にとっては健康的なおやつでも、わんちゃんにとってはさまざまなリスクが潜む食材です。とくにマカダミアナッツは、少量でも中毒を引き起こす可能性があるため口にさせてはいけません。
そもそもナッツは、わんちゃんにとって必要な食品ではなく、あえて食べさせる理由もないといえます。誤って食べてしまうことがないよう、普段から保管場所の管理を徹底することが大切です。
Written by
監修医:小島 麻里 先生
犬猫生活往診クリニック代表獣医師。2013年酪農学園大学を卒業後、地域密着型の1次病院から大学病院、歯科専門病院など11年間小動物臨床で経験を積み、ペット栄養管理士取得後、往診専門動物病院を開院。保護猫おもち・わらびと暮らす。