【column】水は大事な栄養素!冬もしっかり水分補給
2025.12.03
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1日に必要な水の量ってどのくらい?
冬は気温の低下により、飲水量が自然と減少する季節。今回は、寒い季節にこそ意識したい「水分補給」についてお話しします。
猫の体は、およそ60%が水分でできています。水分は飲み物や食べ物から摂取しており、吸収した水分の2/3は体の様々な細胞の中に存在しています。タンパク質、炭水化物、脂質、ミネラル、ビタミン類に次いで、水は第6の栄養素とも言われており、全く水分を摂取しない場合数日で死に至ることもあります。
「水」はH₂Oであり、「水分」は水に他の成分が溶け込んでいる混合物を指します。含まれている成分によっては、水よりも体にとって有益な場合があります。水は血液の90%を占め(それぞれの血球内の水分量も含みます)、リンパ液と共に栄養分と酸素を全身の細胞に届けます。また、体内の老廃物を腎臓から排出するお手伝いをします。さらに、水の持つ「温まりやすく冷めにくい」という性質は、体温調節が苦手な猫の体温の維持に役立ちます。
健康な猫が1日に必要とする水分量はおよそ体重の4〜6%程度です。例えば3kgの猫であれば、120〜180ml程度の水分が必要になります。必要な水分量を全て「水を飲むこと」で賄う必要はありません。食事から摂取できる水分量もかなりあります。一般的にフードの水分含有量は以下の通りです。
ドライフード:10%程度
ソフトドライフード:10〜30%
セミモイストフード:25〜35%
ウェットフード:75%以上
例えば、ドライフードを100g食べるとすると食事から摂取できる水分量は10ml程度になりますが、ウェットフードを同量食べると75ml以上水分を摂取できます。つまりドライフードだけを食べさせている場合には、水分をしっかり摂らせる必要がありますが、ウェットフードがメインの場合は、食事から摂取できる水分量を多少補う程度で大丈夫なのです。うちの子が1日にどの程度水分を摂取しているのか、まずは食べているごはんの水分含有量を計算してみるといいですね。
水分が不足するとどうなるの?

十分な水分を摂取することができないと、体は脱水状態に陥ります。夏の暑い時には熱中症のリスクが急激に上がりますし、場合によっては命に関わる重大な症状を引き起こします。
水分が不足すると、尿が非常に濃くなります。尿量が減ることで膀胱炎になりやすくなり、下部尿路疾患(膀胱結石や尿石症)を発症、または再発するリスクが高くなります。
同時に水分不足は血液を濃縮させます。血液がドロドロの状態になるため、老廃物や毒素を血液中から濾過させる働きをもつ腎臓に大きな負担がかかります。また細胞や組織への酸素と栄養素の供給量が減るため、働きそのものが低下します。その結果腎機能が低下し、場合によっては尿を作ることができなくなり、老廃物や毒素が排出されず体中をめぐることになり、いわゆる尿毒症、という状態に陥る可能性があります。
また体が水分不足になると大腸からの水分の再吸収のスピードが上がります。そのため便が非常に硬く、また腸の動きが悪くなり便秘になります。
上手に水分を摂取する方法は?

元々あまり水を飲まない猫に水を飲ませるのはかなり大変です。まずは食事から摂取できる水分量を増やすようにしましょう。先述の通り、ウェットフードの75%以上は水分ですし嗜好性も良いので、積極的に取り入れるといいと思います。出汁やスープ、ミルクなど水以外で好む水分があれば、人肌程度に温めた状態であげるといいでしょう。
またお風呂場に溜まった水、蛇口から出る水、汲み置きの水など猫によって水の好みが分かれます。うちの子がどんなタイプを好むか把握しておくことも大切です。水の器の材質や形が変わることで飲水量が増えるケースもありますし、ファウンテンタイプの給水器ならよく飲むという猫もいます。好みの給水器を、窓の近く、日中よく寝ている場所、落ち着いた静かな場所など、複数箇所置いておくといいですね。
私たち同様猫にとっても水は欠かすことのできない大切な栄養です。適切な水分量を摂取できるよう工夫して、健康に過ごしていきたいですね。
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。






